元いじめっ子の懺悔ブログ

元いじめっ子が過去の出来事を、面白おかしく懺悔するブログです

第1話"ごめんなさい"事件

この話は、夜寝る前娘たちに一度話したことがあり
話を聞いた二人が
お父さん、あほやな
と、笑いながらとても楽しそうに聞いてくれた話です。
なお、このブログにでてくる登場人物・団体名等は全て仮名を使っています。
 
小学5年生の時の話です。
 
同じクラスに、ノリユキ君という子がいました。
その子は特にいじめられっ子というわけでもなく
どこにでもいる普通の子でした。
ある日、学校の休み時間に私と言い合いになりました。
当時の私は、ほとんど本能で生きていたので、細かい部分は全く記憶にありません。
(スミマセン)
子供らしいありきたりな内容だったと記憶しています。
そして、言い合い=ケンカ ケンカ=殴り合い
の、方程式が早くから出来上がっていた私は
いじめっ子の才能をいかんなく発揮し
言い合いを始めるやいなや、先手必勝でその子を殴ってしまいます。
相手は小学生なので勿論、泣きます。
泣き出すと、周りが騒ぎ出します。
大体は、休み時間内に一連の騒動が収まり、事なきを得るのですが
この日は、ある意味タイミングがバッチリでした。
 
帰りの学級会を始めようと、担任の砂田先生(女)が教室に登場したのです。
その先生とは良い思い出もあるのですが
優等生をひいきするタイプの先生で
いじめっ子の私にとっていわゆる天敵のような存在でした。
その先生にクラスの勇気ある女子?が事の顛末(てんまつ)を伝えています。
ひととおり話を聞いた先生が
 
「皆さん、席について下さい。」
 
と、一旦みんなを席につかせました。
 
(あ~うっとうしいな、はやく学級会終わらないかな)
 
と、ふてくされながら席についた私の心を見透かすかのように
砂田先生は話し始めました。
 
「皆さん!今日話し会う予定だった学級会のテーマは
中止します。」
 
クラス内が少しざわつきました。
 
「ついさっき、武始君がノリユキ君を殴ったのはみんな知っていますね?」
 
声に出して返事をする子はいませんが、ほとんどの子がうなずいています。
 
「人を殴るのはいけないことです。」
「悪いことをした人はちゃんとあやまらなければいけません。」

そのようなことを、しばらく熱く語っていました。
今日の先生はいつも以上に正義感に溢(あふ)れているようです。
 
(はやく話終わらないかな~)
 
全く耳に入ってこない話を、上の空で聞いていたら、なんと
 
「武始君!ノリユキ君!
二人とも前に出てきてください!」

「武始君!皆の前でノリユキ君にあやまりなさい!」
 
でました。公開処刑です。
公開処刑とは、みんなが見ている前で強制的に生き恥をさらされる
いじめっ子にとって、最も耐えがたい拷問の一つです。
 
「はやく前に来なさい!」
 
しぶしぶ、前にでてきた私とノリユキ君。
当時、1クラスは30人ほど。
同級生約30人が見守る中、私とノリユキ君は
重い足取りで教壇の前まで行き、お互い向かい合わせに立たされました。
 
 
想像して下さい。
 
 
教壇に立っている先生:処刑執行者

クラスの生徒:町の見物人
 
私:処刑される者
 
ノリユキ君:処刑台

お膳立ては整いました。
しかし、私もいじめっ子のはしくれ
そう簡単にはあやまりません。
しばらく続く沈黙、、、
業を煮やした先生が、さらにまくし立てます。
 
「武始君!早くあやまりなさい!」
「あやまればノリユキ君も許してくれるわ!ね、そうでしょ!?ノリユキ君!!?」

だんだんとヒートアップしてきました。
 
ここで、なぜ私が簡単にあやまらないのか説明します。
あくまで私の見解ですので参考程度にご覧下さい。
 
いじめっ子の私を擁護(ようご)するつもりはないのですが
子供って本当に悪いと思っていなければ、あやまれないものです。
本当に悪いと思ったら自然と、ごめんなさいと言える。
要領の良い子は簡単にあやまったりしますが、素直な子ほど自分が悪いと思わなければあやまらない。
 
自分が納得しないとあやまれないのです。
 
 
さて、そんなこともわからないまま、天敵の砂田先生は
私の態度をみて、ますますボルテージがあがっていきます。
ここで、先生が切り札を出しました。
町の見物人を人質に取ったのです。
 
「武始君!あなたがあやまらない限り学級会は終わりません!!
 
予想外の展開です。
二人だけの問題ではなかったのか。
いよいよ手段を選ばなくなってきました。
周りを巻き込んでまで私をあやまらせたいようです。
さらに追い込んできます。

「みんな、あなたがあやまるのをしびれを切らして待っているのよ!?」
「あ~、あなたのせいで帰る時間が30分以上も遅れてるわ。」
「あなたがあやまりさえすれば、みんな帰れるの!」

もう、そこに普段の温厚な先生の姿はありません。
そこにいるのは紛れもない、鬼です。

(なにも、罪のない人々を人質に取らなくても、、、くっ!)

とは、思ってはいませんが、子供なりにみんなの放課後の時間を
奪うわけにはいかない、と責任を感じ始めます。
さらに沈黙は続きますが、、、
 
(もう限界だ、、、それに目の前のノリユキ君もなんだか辛そうだな。)
 
時刻はとうに五時を過ぎています。
他の生徒の親御さん達も、心配し始めている頃でしょう。
もう、今の私にはノリユキ君への怒りも、先生への憤りもありません。
あるのはただ、町の見物人(クラスのみんな)の為に、この時間を終わらせよう、という純粋な思いだけです。

そして、ついに運命の時間がやってきました。
 
 
 
 
 
 
 
「ご~めぇんなさあ~~~いっ!!」
 
 
 

ボカッ!!
 
 
そうです。お辞儀をしたときの推進力を利用し
その勢いでノリユキ君めがけ、渾身の左ストレートをさく裂させたのでした。
(あっ、ちなみに私は左利きです。)
あやまると同時に再びノリユキ君を思いっきり殴る、という暴挙。
 
先生「ポカーン」

町の見物人「ポカーン」

ノリユキ君「ホッペタおさえて再び泣く」
 
という、誰も予想できなかった構図が完成しました。
そんなキチガイじみた行動に至った私の頭の中は
 
あやまりたくない

でもあやまらないとみんなが帰れない

まてよ、あやまりさえすればみんな帰れるのか

よし、とりあえずあやまって、そしてこぶしで、自分の気持を表現だ!
 
てな感じで考えていたと思います。
あやまるけど、心の中では反省していませんよ
と、先生に対する自分なりの精一杯の表現だったと思います。
さすがの先生も呆れて、その後ほどなくして解散となりました。
 
以上です。
どうでしたか、皆さん。
第一話から、こんな下らない話に付き合っていただきありがとうございました。